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日本人の腸にビフィズス菌が多い理由!海藻を消化できる「特別な菌」の正体とは?

腸内環境がヒトの健康と密接にかかわっていることは近年良く知られるようになりました。腸内細菌叢が地域的、人種間的に異なるということはご存知でしょうか?

この記事では、日本人の腸内細菌の特長を調べた研究についてご紹介します。

目次

世界と比較した日本人の腸内細菌叢の特徴とは?

2026年2月に、東京大学と東京医科大学、早稲田大学の研究チームにより、日本人に特有な腸内マイクロバイオーム(腸内細菌叢)の特徴が世界規模の研究により明らかとなりました。

研究の結果、日本人はビフィズス菌を豊富に持ち、ノリやワカメなどの海藻由来の多糖類を分解する酵素が、日本人の約 90 % で検出されることがわかりました。その一方で、ノリやワカメなどの海藻を分解する酵素は、他地域ではほとんど確認されませんでした。

「Japanese 4Dマイクロバイオームコホート」とは?

今回、研究チームは、日本人の大規模研究基盤である「Japanese 4D マイクロバイオームコホート」参加者 4,198例を含む、日本人 5,000人以上の腸内メタゲノムデータを解析し、これらのデータを世界36ヶ国・25,000人以上の腸内メタゲノムデータと比較することで、日本人に特有な腸内マイクロバイオームの特徴を明らかにしました。

大規模研究基盤「Japanese 4D マイクロバイオームコホート」は、日本人の疾患(Disease)、薬剤(Drug)、食事(Diet)、日常生活(Daily life)に関する情報と腸内細菌に関するデータを統合・解析し、疾患との関連や新しいバイオマーカー(指標となる生体成分)の開発を目的とした研究です。

腸内細菌や口腔内細菌のデータに加え、代謝物質や血中成分、遺伝子情報を含めた網羅的情報(メタゲノムデータ)を統合し解析することにより、病気との関連を明確にすることを目指しています。

日本人の腸内細菌叢は「高所得国クラスター(集団)」に分類

解析の結果、日本人の腸内マイクロバイオームは、主に欧米諸国などの「高所得国クラスター(集団)」に位置付けられていることがわかりました。

このクラスターは、比較的バクテロイデス属が多く、プレボテラ属が少ない特徴を持っています。なお、同じクラスターの中でも日本人に有意に多い、あるいは少ない属も数多く確認できました。

日本人の腸内細菌は、1,056属、3,551種に分類され、平均的に 60.05 % が検出されることが明らかとなりました。代表的な属は、

  • ブラウティア属
  • フェカリバクテリウム属
  • フォカエイコーラ属
  • バクテロイデス属
  • ビフィドバクテリウム属

でした。

日本人に「ビフィズス菌」が多い理由とは?

今回の研究で特に注目すべき点は、日本人の腸内にはビフィズス菌が豊富に存在するという特徴です。

日本人が日常的に牛乳を摂るようになったのは、明治以降の近代です。そのため、多くの日本人は牛乳中の主な炭水化物である〝乳糖〟を分解する酵素を持っていません。

摂取した乳糖は小腸で分解されず、一部が大腸まで届きます。この乳糖がビフィズス菌の重要な栄養源となり、大腸内での増殖を促していると考えられています。

欧米人は乳糖を分解できるためビフィズス菌は増加しにくい

一方、多くの欧米人は乳糖を分解することができるため、牛乳を摂取してもビフィズス菌の増殖にはつながりにくいと考えられます。

なお、乳酸菌飲料やヨーグルトは、その製造・流通・保存過程で乳酸菌やビフィズス菌により乳糖が分解されますので、乳糖の含有量は少なくなっています。腸内の乳酸菌やビフィズス菌への栄養源(乳糖)の供給ではなく、プロバイオティクス(菌そのもの)としての要素が影響していると考えられます。

海藻を食べる日本人ならではの腸内細菌

さらに、日本の伝統的な食文化に関連する特徴として、ノリやワカメなどの海藻に含まれる多糖類を分解する酵素遺伝子を持つ腸内細菌が、90 % 以上の日本人から検出されました。

海藻に含まれる多糖類は食物繊維の一種であり、野菜や穀類に含まれる食物繊維とは構造が大きく異なります。そのため、海藻多糖類用の酵素がないと分解することができません。

この酵素は、主に海藻を常食とする東アジア人クラスターのみで高頻度に見られ、欧米諸国では 0 ~ 16.7 % しか検出されませんでした。

これらの特徴は、腸内細菌が食文化に適応し、ヒトと共生しながら進化してきたことを示す代表的な例であると、著者らは述べています。

年齢・性別・BMIでも腸内細菌は変わる

その他にも、年齢、性別、体格(BMI)と関係の深い、日本人特有の腸内細菌も明らかになりました。

  • 世代毎に多い菌が異なること
  • 男性ではプレボテラ属が多いこと
  • 女性ではエガセラ属が多いこと
  • BMIが高い人ほどアシダミノコッカス属、メガスファエラ属が多いこと

などが明らかとなりました。

また、個人間の微生物構成の差異は非常に大きく、属レベルで 100 ~ 1,000倍の変動も確認されました。

腸内細菌に最も影響するのは「薬」だった

さらに、薬の服用が腸内細菌の構成と機能に強い影響を及ぼし、生活習慣や病気よりも大きいことが明らかになりました。759種類の薬剤による影響が解析され、薬剤による影響は、年齢、性別、BMIより 3倍大きいことが明らかとなりました。

特に、抗糖尿病薬や消化器系薬による影響が大きいことが明らかとなりました。薬剤別でみると、プロトンポンプ阻害剤(胃酸の分泌を抑制する薬)と、α-グルコシダーゼ阻害薬(糖尿病の治療薬)による影響が大きいことがわかりました。

プロトンポンプ阻害剤

胃酸の分泌を抑える薬で、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎の治療・改善に使用されています。この薬の使用により、口腔由来菌の腸内増加や多剤耐性菌(クラブシエラ肺炎菌、腸球菌など)の増加を引き起こすことが確認されました。

α-グルコシダーゼ阻害薬

炭水化物から糖の生成を抑える薬で、糖尿病の治療薬や合併症の進行を遅らせる目的で使用されています。この薬では、腸内細菌の多様性の低下と短鎖脂肪酸生産菌の減少を引き起こすことが確認されました。

研究では、薬剤の長期使用は、腸内環境や生理機能を変化させ、腸内細菌叢の持続的な変化を引き起こすことが示されました。

「5種類以上の薬剤の併用」も腸内細菌に影響

また、5種類以上の薬剤の併用は腸内細菌の多様性を有意に低下させ、短鎖脂肪酸生産菌を減少させることが確認され、高齢者や慢性疾患患者において、薬剤の過剰使用の抑制と薬剤最適化が重要であることが確認されました。

日本人の腸内細菌研究が医療を変える可能性

本研究は、日本人の食文化と遺伝的背景に密接にかかわる腸内細菌の特徴を相互作用の観点から、大規模かつ高精度に解析し整理することで、将来の予防医学や個別化医療の基盤となることが期待されていると、著者らはまとめています。

健康な腸内環境を保つためには、規則正しい生活や充分な睡眠をとること、ストレスをためないことが大切ですが、食事の内容に気を付けることが最も大切です。食物繊維や発酵食品を日々の食事に採り入れ、健康な心身を維持することを心掛けましょう。

参考文献

1) S. Nishijima, et al. The Japanese gut microbiome: ecology, uniqueness, and impact on health and disease. Proc. Jpn. Acad., Ser. B , 102 (2), 82–103 (2026).  https://doi.org/10.2183/pjab.102.006
2) 日本人の腸内細菌は世界とどう違う? -世界37ヵ国の大規模比較から見えた日本人腸内マイクロバイオームの特徴 : 東京大学記者発表(2026年 2月13日)
  https://www.k.u-tokyo.ac.jp/information/category/press/0029170.html
3) 日本人の腸内細菌は世界とどう違う? -世界37ヵ国の大規模比較から見えた日本人腸内マイクロバイオームの特徴 : 東京医科大学ニュースリリース(2026年 2月13日)
   https://www.tokyo-med.ac.jp/news/2026/0213_150000003838.html
この記事の監修者
納豆博士|小笠原 和也 そのもの株式会社学術顧問・九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

小笠原 和也

そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

略歴・著書・論文実績等 詳細へ

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