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プラントベースフードと大豆タンパク質―世界で注目される理由と知っておきたい注意点―

目次

プラントベースフードとは?

プラントベースフードとは、植物由来の原材料を使用した食品のことで、動物由来の原材料(肉や魚など)を含まないものです。代替肉、大豆ミート、植物性ミルク(大豆、アーモンド由来)などがその代表です。

ヴィーガンやベジタリアンなどの動物性食材を極力排除した食生活を送る人々が使用する食材でもあり、今後、世界的な規模で起こるであろうプロテインクライシスへの対応策として注目されています。

日本をはじめとする先進国では、少子高齢化傾向にあり人口減少が危惧されています。その反面、人口が増加している国々もあり、地球規模でみると人口は増加傾向にあります。この勢いで人口が増加して行けば、食料、特にタンパク源である動物や水産物が供給不足に陥る危険性が指摘されており、プロテインクライシスと呼ばれています。

プロテインクライシスの救世主「大豆」

そこで注目されているのが大豆です。大豆は「畑のお肉」とも呼ばれ、良質なタンパク質の代表的な食材です。

タンパク質の含量も高く、アミノ酸スコアも 100 と優れています。また、日本食品標準成分表で確認すると、乾燥大豆(黄大豆)は、タンパク質が 31~33 %、脂質が 20~23 %、炭水化物が約 30 %と、栄養バランスも良いことがわかります。

また、植物由来のタンパク質の中でも、大豆のタンパク質は水に溶けやすいため、液体やペースト状に加工できます。さらに、タンパク質濃度を一定以上に濃縮した液体やペーストを加熱処理すると、ゲル(固体)になります。加工方法によりさまざまな形態にできる点で優れているといえます。

世界で見ると、大豆はほとんど「食べられていない」

しかしながら、大豆は〝作物の価値としては高いが、食べ物としての価値が低い〟ともいわれています。日本では、納豆、豆腐、味噌、醤油などの発酵食品の主原料として、また、多くの料理材料として用いられていますが、世界的に見れば稀な例といえます。諸外国では、それほど食材としては使用されていないのです。

世界中の大豆年間生産量は約3.6 億トンとされています。その中で、日本国内で食用(納豆、豆腐、味噌、醤油など)に供される大豆は約 100万トン(0.28 %)とされています。

その一方で、約 3 億トン(約83 %)が大豆油の原料として使用されています。生産されている大豆油は約 0.6 億トンです。

搾油後の残渣である脱脂大豆は約 2.5 億トン出てきます。脱脂大豆の一部は、業務用などに供される速醸醤油や味噌の原料として使用されるほか、ソイプロテインや大豆ミート、食品のつなぎなどに使用される大豆たんぱく・大豆ペプチドの原料として使用されますが、そのほとんどは動物用飼料として使用されます。

なお、大豆たんぱく・大豆ペプチドの国内年間使用量は 6~7 万トンと推計されています。 つまり、大豆を多くの食品原料として使用している日本においても、その使用量は全生産量の 1 % にも満たないのです(大豆油は除いています)。

体に良い大豆、ひとつだけ知っておきたい注意点「レクチン」

このように食用以外にも有用な大豆ですが、一点だけ注意が必要な事項があります。大豆に含まれる代表的なタンパク質である「レクチン」です。

レクチンは、動物・植物・微生物・ウイルスに広く存在する糖タンパク質です。食品の中で、比較的レクチンを多く含むものとして、玄米、小麦粉(パン、パスタなど)、蕎麦、チアシード、砂糖などがあります。小麦に含まれるグルテンもレクチンの一種です。植物だけではなく、牛、豚、鶏、魚などの動物性食品にも含まれています。

その一方で、レクチンを摂取すると、膨満感、吐気、嘔吐、下痢を引き起こすことが知られています。大豆を含む植物がレクチンを生産するのは、捕食者を弱らせて自分達が食べられないようにする、自己防衛システムであるとも言われています。

レクチンは、沸騰水中で 5 ~ 10分以上加熱すると毒性が無くなります。充分な加熱調理や発酵などにより、無毒化することが必要です。

大豆製品のなかでもよく食べられる「納豆」では、その製造工程において、「発酵」の前に「蒸煮」工程があるので、レクチンは無毒化されています。 

プラントベースフードとしての大豆たんぱく・大豆ペプチド

では、プラントベースフードとして利用される大豆たんぱく、大豆ペプチドについて少し詳しく見て行きましょう。

原料は、大豆から油を抽出した残渣の脱脂大豆になります。ほとんどの大豆油は、大豆をヘキサンなどの有機溶媒で抽出して作られます。油を除いた(脱脂)後の大豆なので、脱脂大豆と呼ばれます。脱脂大豆のタンパク質含量は約 50 % 程度となっています。

大豆たんぱく

脱脂大豆から、水で抽出したタンパク質に酸を加え沈殿・回収し、中和後に殺菌、乾燥させたものが「大豆たんぱく」です。タンパク質含量は 90 % 以上になるように調製されています。「粉末状植物性たん白(大豆)」や「分離大豆たん白(Soy Protein Isolate : SPI)」と呼ばれます。ゲル化性、保水性、乳化性に優れているため、ハンバーグやパンのつなぎ、乳製品の乳化安定化剤などに使用されます。また、タンパク質を高純度・高濃度で含んでいるため、ソイタンパクパウダーとしてタンパク質補強素材として利用されています。

大豆たん白を、エクストルーダーで高圧高温処理し成形したものが「粒状植物性たん白(大豆)」と呼ばれます。水で戻すと肉に近い食感を呈するため、肉類加工品に加えたり、代替肉の原料として使用されます。そのままの状態で「大豆ミート」として販売されているケースもあります。

大豆ペプチド

そして、大豆たんぱくをタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で分解し、殺菌、乾燥させたものが「大豆ペプチド」です。タンパク質が低分子のペプチドに分解されています。ソイタンパクパウダーとして、吸収率の高いタンパク質補強素材や機能性食品素材等として利用されています。

豆乳

その他のプラントベースフードとして、大豆由来の植物性ミルクがあります。簡単に言うと「豆乳」です。無調整の豆乳は、牛乳と同じくらいのタンパク質を含有しています。濃度は約 3 % 前後です。また、牛乳と同程度の乳化性、高い発酵性があり、ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料の代替原料としての開発が進んでいます。

大豆アレルギーには注意が必要

以上、プラントベースフードとしての大豆の有用性を述べてきましたが、一つだけ気になる点があります。

大豆によるアレルギーの発症です。代表的な食物アレルゲン(アレルギー発症物質)は、卵と牛乳ですが、これに大豆、小麦、米を加えて五大アレルゲンとも呼ばれています。

日本人は比較的大豆によるアレルギーの発症が少ないのですが、近年増加しているのが、木の実や豆類によるアレルギーです。消費者庁発表の「令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事例報告書」によると、全食物アレルギーの内、大豆が占める割合は 1.3 % と報告されています。また、年齢別では、18歳以上で、大豆が 9.1 % で第3位となっています。

今後の動向に注意が必要と考えられます。

納豆になると大豆アレルギー発症リスクは減る?

納豆になることによって、大豆アレルギーのリスクは低くなると考えられます。

大豆のアレルゲンが、ナットウキナーゼによって分解されるためと推測されます(納豆中のタンパク質分解酵素は、ナットウキナーゼのみであることを確認しています)。

また、大豆アレルギー発症数と納豆アレルギー発症数が大きく異なることから、間接的な証明となっています。

ただし、納豆には納豆で別のアレルギーリスクがあるのでご注意を。

▼納豆アレルギーについての記事はこちら

参考文献

1)    佐本将彦:プラントベース食品における大豆たんぱく質の役割 プロテインクライシスのリスク低減策,化学と生物,62 (3), 115-121 (2024)
2)    プラントベース食品って何? : 消費者庁
https://www.caa.go.jp/notice/other/plant_based/assets/representation_cms201_210820_01.pdf
3)    プラントベースフードとは? : 一般社団法人 プラントベース ライフスタイル ラボ ホームページ
https://pbl-lab.net/plant_based_food/
4) 令和6年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事例報告書 : 消費者庁
https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/food_sanitation/allergy/assets/food_labeling_cms204_241031_1.pdf
 
この記事の監修者
納豆博士|小笠原 和也 そのもの株式会社学術顧問・九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

小笠原 和也

そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

略歴・著書・論文実績等 詳細へ

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