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超加工食品とは、工業的な加工の程度と目的に応じて食品を分類するNOVA分類法により定義されている食品群です。
超加工食品の特徴は、主に工業用途に特化した原料を、一連の工業プロセスを経て製造した食品を指します。
つまり、通常の食品原料(食材)に、食品成分をさらに加工した原料や食品添加物を加え、多数の工程を経て工業的に製造される食品のことです。
具体的な食品としては、清涼飲料水(各種ジュースやエナジードリンクなど)、スナック菓子、加工肉製品(ソーセージ、ベーコン、ハンバーグ・ハンバーガー、ナゲットなど)、インスタント食品(ラーメン、スープなど)、調理済みのパスタ・ピザ料理、乳児用粉ミルクなどです。
今回の記事では、超加工食品についての問題点を研究した論文を紹介します。


超加工食品は、美味しく、いつでもどこでも食べることができ、保存期間が長いため、現代の食生活に無くてはならないものと言っても過言ではないかもしれません。
NOVA分類法を提唱した C. A. Monteiro らの報告では、超加工食品は、米国、カナダ、イギリスなどの高所得国では、総摂取エネルギーの半分以上を占めています。
また、ブラジル、メキシコ、チリなどの中所得国では、総摂取エネルギーの 1/5 から 1/3 を占めているとされています。
しかしながら、超加工食品は、健康面でいくつかの課題が指摘されています。
食品が健康に及ぼす影響は、多くの要因によって左右されますが、重要な要素として、食品の栄養密度(単位エネルギーあたりの栄養素量)とエネルギー密度(単位体積あたりのエネルギー量)という2つの考え方が重要になります。
栄養密度とは、「摂取したエネルギー(カロリー)あたりに、どれだけ栄養素が含まれているか」を表す指標です。例えば、食物繊維、ビタミン、ミネラル、良質なたんぱく質などを多く含む食品は、栄養密度が高い食品と考えられます。一方、必要な栄養素が少なく、糖質や脂質だけが多い食品は、栄養密度が低い食品といえます。
エネルギー密度とは、「食品の重さや体積あたりにどれだけのエネルギー(カロリー)が含まれているか」を示す指標です。エネルギー密度が高い食品は、少量でも多くのカロリーを摂取できるため、食べ過ぎにつながりやすい特徴があります。
日本や地中海諸国などの長寿と健康を促進するとされる、伝統的で長年にわたる食習慣は、穀物、野菜、豆類、果物、ナッツ類などの植物性食品をバランス良く摂取する、未加工または最小限の加工食品から作られる料理や食事が中心です。
これらに加え、動物性食品が適量で、塩分は少量であれば、栄養密度とエネルギー密度は概ね適切となり、質の高い食事と言われています。
一方で、超加工食品は、主に安価な工業用原料を主原料とし、そこに食品添加物を添加し、一連の加工工程を経て製造されています。
そのため、不健康な種類の脂肪(トランス脂肪酸など)、糖質、塩分が多く含まれ、その一方でタンパク質、食物繊維、ビタミン類やミネラルなどの微量栄養素は乏しい食品と言えるのです。
栄養密度とエネルギー密度が高い反面、必要な栄養素が乏しく、食事のバランスを崩し、エネルギーの過剰摂取、栄養欠乏症や慢性疾患(例えば、肥満、脂質異常症、高血圧)などを引き起こす可能性が指摘されています。

A. C. Monteiro らの論文では、固形の超加工食品の多くが非常に高いエネルギー密度を持つことを報告しています。例えば、100gあたりのエネルギー量は次のようになります。
| 食品 | エネルギー量(100gあたり) |
|---|---|
| 焼き菓子 | 約225~275 kcal |
| エナジーバー | 約350~400 kcal |
| ビスケット・ポテトチップス | 約400~500 kcal |
日本国内で販売されているものも同等かそれ以上のカロリーであることが確認できます。
また、清涼飲料水やエナジードリンクなどの飲料の超加工食品では、しばしば大量の砂糖が添加され、栄養素が不足しているかあるいは全く含まれていないのが一般的です。
これらの特性により、超加工食品の多くは、意図せずエネルギーの過剰摂取を引き起こしやすく、結果として過体重や肥満につながると報告されています。
また、超加工食品は一般的に血糖負荷が高いため、満腹感を伝え食欲をコントロールする神経系の内因性プロセスを阻害あるいは混乱させてしまう可能性があり、肥満や糖尿病のリスクを高めるとも報告されています。
超加工食品は、習慣性を持たせるように作られていることが多く、場合によっては中毒性さえあるため、健康的な選択をしたり、過剰摂取を避けたりすることが難しくなるとする報告もあります。
その他の健康面に関する報告として、実験的研究では、超加工食品は高血糖反応を引き起こし満腹感が低いだけでなく、様々な炎症性疾患を促進する腸内環境を作り出すことなどが示されています。
また、臨床面でも、超加工食品の摂取量の増加は、食事全体の栄養価の低下と、肥満、高血圧、冠動脈疾患および脳血管疾患、脂質異常症、メタボリックシンドローム、消化器疾患、そして全がんおよび乳がんの増加につながることが示されています。
超加工食品について語られる際、多くは健康への影響に焦点が当てられます。
しかし、NOVA分類を提唱したA. C. Monteiro らは栄養・健康面のみならず、社会的、環境的にも影響が大きいと警笛を鳴らしています。
社会的な影響として次のように述べています。
「家庭内外における社会生活は、超加工食品によって弱体化している。これらの食品は、すぐに食べられるスナックや飲料、温めるだけで食べられる食品として手軽に入手できるため、家庭で作られる料理や食事に取って代わっている。食べ物を手に入れ、準備し、調理し、共に楽しむという、人間としての進化の一部である、そしてそこから得られる食べ物の本質、意味、価値に関する知識は、ますます失われつつある。(中略)同じ場所に住む人々が集まり、互いの生活を分かち合う特別な場所であるダイニングルームは消えてしまうかもしれない。代わりに、家庭では一人で、不規則な時間に、不注意に、しばしば他のことをしながら食事をする習慣がついてしまう。子供や若者は、コンピューターを使ったり、ビデオゲームをしながら食事をする。外出先では、超加工食品は仕事中、歩行中、運転中、あるいは携帯電話使用中など、いつでもどこでも消費される。これらは一般的に孤立した状況であり、超加工食品が社会的交流を阻害する。」
以下に著者らの意見をまとめます。

超加工食品は、
という利便性があります。その一方で、家庭で食材を選び、調理し、食卓を囲む機会が減少することが懸念されています。著者らは、
食材を選び、料理を作り、家族や仲間と食卓を囲むことは、人類の進化とともに育まれてきた文化であり、食べ物の意味や価値を学ぶ機会でもある
と述べています。超加工食品が普及することで、このような食文化が徐々に失われていく可能性を指摘しています。
著者らは、食事は栄養を摂るだけの行為ではないとも述べています。
例えば、
といった時間は、人と人とのつながりを深める大切な機会です。しかし、超加工食品は「いつでも・どこでも食べられる」ことから、
など、「ながら食べ」や孤食を助長する可能性があると指摘しています。
特に子どもや若者では、ゲームや動画を見ながら食事をする習慣が定着すると、食事を家族とのコミュニケーションの時間として捉える機会が減ることも懸念されています。
家庭で料理をする機会が減れば、
といった食文化の継承も難しくなります。
食習慣や食文化は、単に「何を食べるか」だけではありません。食材を選び、料理を作り、家族や仲間と食卓を囲むという一連の行為そのものが、日本をはじめ世界各地で受け継がれてきた文化でもあります。
そのため著者らは、超加工食品の普及によって、こうした文化的な価値が失われる可能性についても言及しています。
食事は栄養補給だけでなく、人との交流を深める「場」としての役割も担っています。家庭の食卓では、家族がその日の出来事を話し合い、互いを理解し合う時間が生まれます。友人や職場でも、同じ食事を囲むことでコミュニケーションが円滑になり、人間関係を築くきっかけになります。
著者らは、超加工食品の普及によって、このような「共に食べる文化」が失われることを危惧しています。

これらは、食習慣・食文化は食材や食事に限ったものではないことを、改めて考えさせられる指摘です。食事は家族や仲間のコミュニケーションを円滑にし、絆を強めるために必要な「場」でもあります。「場の共有」は、社会学的にも重要であり、現代社会において改めて見直し、尊重すべき事項ではないでしょうか?
超加工食品の問題は、健康だけにとどまりません。NOVA分類を提唱したMonteiroらは、超加工食品の環境的な影響として、次のように述べています。
「超加工食品の生産と消費は、環境にも悪影響を与えている。例えば、米国では、食品包装は重量ベースで包装全体の約半分を占め、包装廃棄物全体の体積のほぼ 2/3 を占めている。超加工食品のボトル、容器、包装材、その他の包装材は、膨大な量のゴミを生み出し、その中には生分解されないものもあり、路上や田園地帯に捨てられ、下水道から流れ出し、埋立地に投棄されている。超加工食品とその原材料の製造と流通には、しばしば長距離の国際輸送ルートが伴い、そのため再生不可能なエネルギーが過剰に消費され、気候変動の一因となっている。人間の食用となる動物の集約的な飼育は、特にエネルギー消費が激しいと言える。ハンバーガー用に飼育される牛は、大豆やトウモロコシなどの単作栽培で生産される飼料を必要とし、抗生物質を含む多くの投入物も必要としている。ブラジルなどの国では、広大な熱帯雨林やサバンナの破壊を伴っている。これらすべては、他の形態の工業型農業と同様に、気候変動、汚染、生物多様性の喪失、そして水、土壌、エネルギー、その他の再生不可能な天然資源の枯渇、劣化、損失につながる。」
以下に著者らの意見をまとめます。
超加工食品の多くは、品質を維持し長期間保存するために、ボトルや容器、プラスチック包装などが使用されています。著者らによると、アメリカでは食品包装が包装材全体の重量の約半分、包装廃棄物全体の体積では約3分の2を占めていると報告されています。
使用後の包装材の中には、生分解されにくいものも多く、路上や自然環境へ投棄されたり、河川や海へ流出したりすることで、環境汚染の原因となっています。
超加工食品は、原材料の調達から製造、流通、販売まで、多くの工程を経て消費者のもとへ届けられます。その過程では長距離輸送が行われることも多く、輸送に伴う化石燃料の消費や二酸化炭素(CO₂)の排出が増え、気候変動への影響も懸念されています。
また、ハンバーガーなどに使用される牛肉の生産では、大豆やトウモロコシなどの飼料を大量に必要とし、その栽培のために森林開発が行われる地域もあります。
さらに、集約的な畜産では多くのエネルギーや水資源が使用されるほか、抗菌薬などの投入も必要となります。著者らは、このような工業的な食料生産が、
につながる可能性を指摘しています。

食品包装材のゴミ問題や、これらに由来する化学物質やマイクロプラスチックなどによる環境汚染は、全世界共通の問題点であり、日本も例外ではありません。
また、昨今では包装材であるプラスチック製品や印刷に必要なインクなどの石油由来品の調達・流通の不安定さも問題となっています。今一度、見直す点が多々あると感じています。
ここまで読むと、「超加工食品は悪い食品」と受け取ってしまうかもしれません。しかし、A. C. Monteiro らは決して現代の生活習慣や食品産業を否定しているわけではありません。
超加工食品の食品としての問題点において、次のように述べています。
「現在、食品、栄養、そして公衆衛生を考える上で最も重要な要素は、栄養素そのものではなく、食品そのものでもなく、購入・消費される前に食品にどのような加工が施され、そして食品に元々含まれていた栄養素がどのように変化していくか、ということである。つまり、問題は食品加工、より正確に言えば、加工の性質、程度、目的、そして加工の結果として食品と私たちの体に何が起こるか、ということである。」
著者らは、重要なのは食品がどのように加工されているかだと述べています。つまり、問題なのは食品そのものではなく、
を考えること、そして
が重要だというのが、著者らの主張です。
日々の生活において〝食〟は重要な要素を持っています。利便性は大切であり、それを排除するのは困難でしょう。しかし、少しずつでも、未加工食品(天然食品)や最小限の加工食品、伝統的な食生活への回帰を促し、心身の健康の維持向上につながるきっかけとなれば幸いです。
参考文献
1) C. A. Monteiro, et al., Ultra-processed foods: what they are and how to identify them, Public Health Nutrition, 22(5), 936–941 (2019)
doi:10.1017/S1368980018003762
2) C. A. Monteiro, et al., Nutrition and health. The issue is not food. nor nutrients, so much as processing, Public Health Nutrition, 12(5), 729-731 (2009)
doi:10.1017/S1368980009005291
3) C. A. Monteiro, et al., The UN Decade of Nutrition, the NOVA food classification and the trouble with ultra-processing, Public Health Nutrition, 21(1), 5-17 (2017)
doi:10.1017/S1368980017000234

小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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