ポリアミンと納豆菌の関係とは?ポリアミン量が特に多い食品は「納豆」

生きて腸まで届く 納豆菌を毎日手軽に。そのもの納豆
生きて腸まで届く 納豆菌を毎日手軽に。そのもの納豆
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ポリアミンは老化を遅らせる?

お年寄りの手を握る女性の手

ポリアミンという物質をご存じでしょうか?数年前に、サーチュイン(長寿)関連因子として話題になりました。

ポリアミンは、ウイルスから人まで、あらゆる生き物の細胞中に存在します。アンチエイジング(抗老化)物質の一つで、細胞の老化速度を遅らせる働きをすると共に、病気の発症に関与する炎症を抑制する事で疾病予防に貢献しています。ダイエット効果が期待されるとの報告もあります。また、細胞内での遺伝子(DNA)複製やタンパク質合成を助ける働きをしています。

ポリアミンは母乳にも含まれ、出産後 10日から 2週間前後に特に多くなり、乳児の消化器の成熟化など、成長促進に寄与しています。このため、ポリアミンが添加された乳児用粉ミルクも販売されています。つまり、乳児から高齢者まで、全ての人に必要なとても重要な物質なのです。

納豆はポリアミン(スペルミジン)を多く含む

ヒトは約20種類のポリアミンを持っており、最も量が多く有用なのが「スペルミジン」です。

基本的には細胞内で合成されますが、日々の食事で、食品や発酵食品から摂取して補ってもいます。食事由来のポリアミンが小腸で吸収されることも報告されています。

大豆と納豆

食品の中では、納豆中のポリアミン含量が高いことが知られています。大豆を原料とする味噌や醤油にも多く含まれていますが、特に、納豆中の含量が多いのです。

また、納豆菌や酵母が多くのポリアミンを生産することが知られており、大豆を原料とする発酵食品(納豆、味噌、醤油など)中に豊富に含まれていることからも、大豆と納豆菌や酵母の相乗効果であることが考えられます。

納豆1パック中に含まれるポリアミンは牛肉の約2倍

納豆パック

市販納豆 1パック(45 g)中には 2 ~ 3 mg のポリアミン(スペルミジン)が含まれています。同じ重量で比較した場合、牛肉の約 2倍の含有量になります。

毎日、1パックの納豆を摂り続けることで、血液中のポリアミン濃度が上昇し、健康長寿に寄与していることが報告されています。血中濃度上昇効果が確認された最初の食品が納豆であり、現在の研究の出発点でもあったのです。

大豆の品種や、納豆の製造条件等によっても納豆中の含有量が変化することが報告されています。ポリアミンの原料となるアミノ酸の構成比率や含量が影響していると考えられています。そして、ポリアミン高含有の機能性納豆の開発も行われました。

乳酸菌やビフィズス菌では効果が低い

2000年代になり、ポリアミンのサプリメントも開発され始めました。ポリアミンサプリの最初の原料は納豆菌培養物でした。次いで酵母培養物、現在では米胚芽なども供給されています。

近年、ビフィズス菌や複数の腸内細菌の混合培養により、腸管内でポリアミンが生成されるとの報告がされています。

腸内環境を整え、腸内細菌叢を活性化させポリアミンを作らせることに意味はあると考えます。しかし、乳酸菌やビフィズス菌を摂っただけでは同様な効果は低いと考えられます。乳酸菌やビフィズス菌は、生きたまま胃を通過するのが困難と考えられるからです。

なお、乳酸菌を含有するサプリメントのほとんどは、殺菌した乳酸菌(死菌体)を使用しているため、腸管内で増えることはありません。

納豆をはじめとした発酵食品を積極的に摂ろう

納豆を中心とした和食

体内のポリアミンは加齢とともに減少していきます。

健康な体を維持し、長寿を目指していくには、ポリアミン含量が高く健康長寿に寄与することが期待されている、「納豆」を始めとする発酵食品を中心としたバランスの取れた食生活を日々心掛ける必要があると言えます。

参考文献・サイト

1)    納豆に含まれるポリアミンが老化と動脈硬化を遅らせる:全国納豆協同組合連合会資料
https://www.natto.or.jp/topics/pdf/polyamine080701.pdf
2)    Kuniyasu Soda, et al. Polyamine-Rich Diet Elevates Blood Spermine Levels and Inhibits Pro-Inflammatory Status: An Interventional Study, Med. Sci., 9, 22 (2021)
3)    Akiko Okamoto, et al. Polyamine content of Ordinary Foodstuffs and Various Fermented Foods, Biosci. Biotech. Biochem, 61 (9), 1582-1584 (1997)
4)    ポリアミンを増強した納豆の開発とポリアミン高含量納豆の機能性の研究 -納豆中のポリアミン量及びポリアミン前駆体となるアミノ酸量の特徴把握- : 農林水産省 農林水産技術会議 ホームページ
https://www.affrc.maff.go.jp/docs/public_offering/agri_food/2017/26055a.html
5)    松本光晴.腸内細菌由来ポリアミンを機能性成分とした健康寿命伸長食品の開発,生物工学97 (10),599-602 (2019)
この記事の監修
納豆博士|小笠原 和也 そのもの株式会社学術顧問・九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

小笠原 和也

そのもの株式会社学術顧問/九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 35年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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