




以前、「加齢」と「老化」は異なるということを紹介させていただきました。
「加齢」とは、生まれてからの経過時間を表しているにすぎません。一方で「老化」とは、身体(臓器や組織)の実質年齢であり、「生物学的年齢」とも表されます。そして、老化は、しわ、たるみ、しみなどの見た目だけではなく、臓器機能の低下、回復力の低下、恒常性維持機能(外気の温度に合わせた体温調節能力、血糖値のコントロール能力、血圧調節能力など)の低下、外部環境変化への適応能力の低下、日常生活動作(ADL)能力の低下などの原因となります。
老化には、臓器や組織の慢性的な炎症が大きく関与しています。
また、細胞レベルでは、遺伝子(DNA)のメチル化状態が変化していることがわかっています。このことは、2013年にカリフォルニア大学のスティーブ ホーバス博士により明らかにされ、老化の程度を数値化する「エイジングクロック(老化時計)」が確立されました。
エイジングクロックの研究は現在も進められており、改良が重ねられていますが、基本的な DNA のメチル化を分析することで、生物学的年齢が計測できる点は変わっていません。
また、イギリスの研究機関が 2025年 7月に Nature Medicine 誌に発表した論文では、血液中に含まれる約3,000種類のタンパク質を AIで分析し、脳や心臓などの主要な11の臓器の生物学的年齢を計測するモデルが報告されています。
では、どのような行動が「生物学的年齢」の進行を早めたり遅らせたりするのでしょうか?
現段階では、以下のことが報告されています。
喫煙は多くの臓器の老化と関連していることがわかっています
過度な飲酒も多くの臓器の老化を早めることがわかっています
睡眠不足や不眠、これらの悩みが臓器の老化に関連しているようです
日常的にハムやソーセージなどの加工肉を食べる習慣は、臓器年齢を高める傾向があります
活発な運動は臓器や筋肉(骨格筋)の若々しさを保つのに効果的である可能性が示唆されています
青魚に含まれる油(EPA、DHA など)は生物学的年齢(臓器年齢)の若返りに関与する可能性が示唆されています
赤身肉より鶏肉を摂取する方が若さを保つ可能性が示唆されています
健康に対する知識やヘルスリテラシーが反映している可能性が示唆されています
喫煙、過度な飲酒、睡眠不足、加工肉の摂取などは、生物学的年齢の進行を早めるようです。特に、加工肉の摂取は摂らないのが良く、少し食べるのも大量に食べるのも程度に差はないとの報告もあります。
また、先に示したイギリスの研究機関の論文では、「脳」と「免疫機能」の生物学的年齢が、長寿と特に強く関連していたと報告されています。どちらか一方だけでも若い場合、死亡リスクが 40 % 以上低下し、両者とも若い場合、死亡リスクが 56 % 低下すると報告されています。
身体、特に脳と免疫機能の生物学的年齢の進行を緩やかにする生活習慣・食習慣を心掛け、長寿だけでなく、アクティブなシニアを目指しましょう。
参考文献
1) 高齢者の身体的特徴 健康長寿ネット : 公益財団法人長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/shintaiteki-tokucho.html
2) 加齢に伴う身体の変化 : MSD マニュアルジ
https://www.msdmanuals.com/ja-jp/home/24-%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E5%81%A5%E5%BA%B7%E4%B8%8A%E3%81%AE%E5%95%8F%E9%A1%8C/%E9%AB%98%E9%BD%A2%E8%80%85%E3%81%AE%E4%BD%93/%E5%8A%A0%E9%BD%A2%E3%81%AB%E4%BC%B4%E3%81%86%E4%BD%93%E3%81%AE%E5%A4%89%E5%8C%96
3) 加齢と老化の違い : 地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター
https://www.aging-regulation.jp/topics/topics-01.html
4) 大藪葵,亀井康富 : Aging Clockと老化制御,化学と生物,63 (3), 123-131, (2025)
5) H. S. Oh et al. Plasma proteomics links brain and immune system aging with healthspan and longevity, Nat Med., 2052 Jul 9, https://doi.org/10.1038/s41591-025-03798-1

小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。
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