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日本では昔から親しまれている「うま味」。発見者も日本人科学者です。
「UMAMI」として、世界共通の公式用語にもなっています。
今回はそんな「うま味」についてのおはなしです。
よく間違われがちですが、「うま味」と「旨味(旨み)」は別物。「旨味(旨み)」が感覚的な美味しさを表すものであるのに対し、「うま味」は科学的にみた特定の物質の味質を表しています。
うま味は、5種類の「基本味」の一つ。「基本味」は、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味から成ります。「基本味」は、他の味を混ぜ合わせても作ることができない味です。うま味の成分は、アミノ酸であるグルタミン酸、核酸であるイノシン酸とグアニル酸の3種類になります。これらに、ナトリウムなどのミネラルが結合した物の味を総称して「うま味」といいます。
アミノ酸はタンパク質を構成する成分であり、核酸は遺伝子やエネルギー源である ATP などの成分です。ヒトを始め、動植物が体内で合成する成分です。グルタミン酸は、肉類や魚類に元々含まれているものに加え、時間の経過と共にタンパク質が分解し増えていきます。同様に、イノシン酸は筋肉中に含まれるものが溶け出したり、遺伝子などが分解されて増えていきます。この変化を、科学的には「自己消化」と呼び、食品・調理的には「熟成」と呼びます。食品が熟成や、単純に蒸したり焼いたりする調理でも美味しくなる(うま味が増える)のはこのためです。
グルタミン酸を豊富に含む食品は、昆布(1,500 ~ 2,300 mg/100g)、トマト(240 ~ 380 mg/100g)、玉ねぎ(250 mg/100g)、白菜(180 mg/100g)、味噌(1,800 ~ 3,800 mg/100g)、醤油(1,300 ~ 2,700 mg/100g)、チーズ(940 ~ 9,900 mg/100g)などです。当然、魚介類や肉類にも多く含まれていますが、遊離(単体)の状態ではなく、タンパク質の構成成分が主となっています。ちなみに、母乳中にも多く含まれており、人が最初に知るうま味であると言われています。
イノシン酸を豊富に含む食品は、かつお節(470 ~ 700 mg/100g)、かつお(130 ~ 270 mg/100g)、肉類(牛、豚、鶏)などです。グアニル酸は、シイタケ(150 mg/100g)やキノコ類に含まれています。
うま味成分は食品中にも含まれますが、さらに増強するために使われるのが「うま味調味料」です。旨味を増し、味を調える目的で使用される食品添加物です。なお、1980年代以前は「化学調味料」と呼ばれていました。
日本うま味調味料協会によると、うま味調味料は次の 4種類に分類されます。
※リボヌクレオチドナトリウム:イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの混合物のこと。
「うま味調味料」は、発酵法と化学合成法を併用した半合成法(部分合成法)で作られています。
グルタミン酸ナトリウムの製造方法は次の通りです。糖蜜(サトウキビを絞ったもの)やデンプンなどを栄養源として、Corynebacteriuum glutamicum (コリネバクテリウム グルタミカム)を培養(発酵)しグルタミン酸を作ります。次に、グルタミン酸と水酸化ナトリウムと反応させ、グルタミン酸ナトリウムの形にします。これを結晶化法により回収し、乾燥させると出来上がりです。結晶化法とは、グルタミン酸の分子同士が固まりとなり、粒(結晶)を形成し、液体中から固形分として取り出す方法です。グルタミン酸の発酵法が開発された 1950年代後半からこの方法で作られています。また、その他のアミノ酸の多くも同様にコリネバクテリウム属細菌による発酵法で作られています。
イノシン酸ナトリウムとグアニル酸ナトリウムの製造法もほぼ同様です。バチルス属またはコリネバクテリウム属の細菌を、糖蜜やデンプンなどを栄養源として培養(発酵)し、イノシンとグアノシンを作ります。これに、微生物由来の酵素を働かせ、リン酸を結合させ、イノシン酸とグアニル酸に変化させ、さらにナトリウムを結合させます。同じ核酸でも、リン酸が結合する場所により、うま味を呈するものと無味のものが出来るため、このような方法を取っています。
人体を形成するアミノ酸や核酸の一部にも少なからず味があります。アスパラギン酸(アミノ酸)や、アデニル酸(核酸)のナトリウム塩も、グルタミン酸に比べ弱いながら、うま味をもっています。また、コハク酸(有機酸)も貝の特徴的な味を構成している物質であり、うま味成分とする場合もあります。
「うま味調味料」は、製造プロセスの一部に化学反応や合成化合物を使用しますが、出来上がった調味料は食品(天然物)に含まれるものと変わりはありません。ただし、他の成分は含まれていない純粋物なので、使い過ぎには注意が必要です。使い過ぎるとエグ味になり、大過剰の使用を長期間継続すると、健康被害が出る可能性も否定できません。
なお、完全化学合成による人工のうま味成分の製造法は確立されていますが、市場には出ていません。高価になるからです。
食品添加物である「うま味調味料」とは異なり、食品に分類される調味料として「酵母エキス」と「たん白加水分解物」があります。主に加工食品に使用される、「うま味」と「コク味」を付けるための調味料です。
タレなどの調味料や、だしパックなど、加工食品に多く使われています。
「酵母エキス」は、核酸とアミノ酸の混合物で、酵母を酵素や酸で分解したものや熱水で抽出したものがあります。酵母は、専用に培養されたものを使用しますが、一部にはビールなどの発酵残渣中の酵母を使用するものもあります。
お惣菜や、ハム、ソーセージ、お弁当、お菓子などの様々な食品に使われています。
「たん白加水分解物」は、アミノ酸とペプチドの混合物になり、その原料により「動物性」と「植物性」に分けられます。「動物性」の原料には、動物の骨や皮から作られるゼラチンなど、食用に適さない部位が使われます。「植物性」の原料には、大豆、小麦、トウモロコシなどが使われます。製造方法には「酵素分解法」と「酸分解法」があります。「酵素分解法」は、各原料をタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)で分解するものです。「酸分解法」は、各原料を熱した塩酸で分解し中和するものです。製造コスト(価格)の面から「酸分解法」が主流となっていますが、「酸分解法」では、分解中に発ガン性が疑われる物質が生成されることが報告されています。国際的な規格である Codex(コーデックス)規格が設けられており、各種の安全性に関する試験も実施され、一定の安全性は報告されていますが、依然として強い拒否反応を示す人々も少なくありません。
「化学調味料」や「食品添加物」と聞くと〝身体に良くない〟というイメージを持たれる方は多いと思います。食品中のうま味成分を調理などで引き出し、美味しい料理とするのが一番であることは間違いありませんが、くれぐれも使い過ぎは禁物です。
参考文献・サイト
1) 日本うま味調味料協会 : https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/
2) 特定非営利活動法人 うま味インフォメンションセンター :https://www.umamiinfo.jp/
3) 日本食品成分表2020年版(八訂)アミノ酸成分表編 第1表(データ)
4) くらしと微生物、村尾澤夫・藤井ミチ子・荒井基夫 共著、培風館
5) 日本アミノ酸液工業会 : https://www.aminosaneki.gr.jp/about.html
小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/
九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 35年間に渡る納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。
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