納豆による健康被害はある?納豆製造の歴史と安全性について解説

生きて腸まで届く 納豆菌を毎日手軽に。そのもの納豆
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目次

納豆菌の歴史

以前、紅麹を主成分とするサプリメントによる健康被害について解説を行いました。
紅麹は安全?効果と注意点について解説
その流れで、食品、特に納豆製造の安全性に関する質問等もありましたので、少し解説をしてみたいと思います。

古くから私たち日本人の健康を支えてきた「納豆。納豆は蒸した大豆に納豆菌をふりかけ発酵させて作られる伝統的な発酵食品です。

納豆菌が単独の菌として分離されたのは 1905年(明治38年)のことです。分離したのは、農科大学(現 東京大学)の澤村眞 博士であり、Bacillus natto SAWAMURA と命名されました。

現代において、納豆の製造に使用される納豆菌の多くは、種菌として販売されている、宮城野菌(有限会社 宮城野納豆製造所。宮城県仙台市)、高橋菌(有限会社 高橋祐蔵研究所。山形県上山市)、成瀬菌(株式会社 成瀬醗酵化学研究所。東京都練馬区)のいずれかです。これらの種菌は、一般の方でも購入可能です。

本格的な種菌の供給販売が開始されたのは、1918年(大正7年)頃で、札幌農学校(現 北海道大学)の半澤洵 博士によるものです。近年では、独自で選別した納豆菌株を使用する納豆メーカーも増えてきました。弊社(そのもの株式会社)の「そのもの納豆菌(納豆菌 SONOMONO株)」もその一つです。

納豆菌による食中毒は今まで報告なし

100年以上にわたり、純粋培養された納豆菌が納豆の製造に使われ続けていますが、納豆菌による食中毒などの報告はありません。同時に、大学や公的研究機関等でも納豆菌の研究が継続的に行われてきましたが、毒素の生産や危険因子に関する報告はありません。

また、2010年には、慶応大学の板谷らのグループが納豆菌(宮城野株)ゲノムの全塩基配列を解析・公開し、安全性が遺伝科学的にも確認されました。

このように、納豆菌は、安全に食品製造に使用可能な菌であることが確認されています。

納豆の歴史は1000年以上

納豆の食経験は1,000年以上といわれていますが、1,000年前から一般に流通していたわけではありません。詳細な資料が残されていないので、不明な部分が多いのですが、室町時代(1336 ~ 1573年)には庶民の食卓にのっており、戦国・安土桃山時代(1568 ~ 1603年。年代には諸説あり。)には陣中食(戦争の際に野戦場で食された食糧)としての役割を果たし、江戸時代(1603 ~ 1868年)には納豆売りが朝早くから江戸の町を活気づけていたとの記録があります。

ただし、江戸時代に販売されていた納豆は、バラ納豆、ザル納豆と呼称されており、個包装されているものではなかったようです。江戸時代には、藁苞(わらづと)の他に、筵(むしろ)、鉢、木綿、笊(ざる)、木箱・重箱による発酵が行われていたとの記録が残っています。

藁に包まれた藁苞(わらづと)納豆は、各家庭で製造される時の形態だったようです。そして、藁苞納豆の形態が広く流通され始めたのは、明治時代になってからでした。

この頃までの納豆の製造は、藁に付着した天然の納豆菌による自然発酵に頼っており、失敗も多かったようです。とても、衛生的な食品とはいえない時代でした。

納豆製造の歴史(大正時代)

近代的な納豆の製造が行われるようになったのは、大正時代からです。

納豆菌の純粋培養に成功し、種菌の頒布に努めた札幌農学校(現 北海道大学)の半澤洵 博士は、藁苞に代わり、衛生的な経木(薄い木の板)や折箱による発酵法を研究し、1919年(大正8年)「半澤式納豆製造法」として普及を始めました。半澤式納豆製造方法は徐々に広がっていきましたが、発酵管理の無知や未熟さがあり、まだまだ失敗も多かったと記録されています。

やがて、仙台の三浦二郎 氏により、発酵を行う室(むろ)の改良が行われ、経木を使った折箱の中で安定的な納豆製造ができるようになりました。三浦氏によって改良された室は文化室」と呼ばれています。衛生的で安全な納豆の製造の始まりです。

納豆製造の歴史(昭和~現在まで)

昭和の時代となり、安定的で衛生的で安全な納豆の工業製造が出来るようになりました。第二次世界大戦の敗戦により、原料の大豆の入手が困難となり、昭和20年頃にはほとんどの納豆業者が休業状態となる苦難の時代を乗り越え、現代の発泡スチロール容器による納豆の工業製造へとたどり着きました。

現在では、納豆を含むほとんどの食品製造業者にはHACCP(ハサップ,危害分析・重要管理点)による衛生管理手法が義務化され、GMP(ジーエムピー,優良製造規範)に基づく製造管理が行われようになりました。

ほとんどの納豆製造工場では、塵や雑菌の量が規定値以下に保たれた衛生的な室内環境下で、定められ管理された手順により製造されています。これらのルールを正しく守り続けることにより、安定的に衛生的で安全な納豆が作られていきます。

「そのもの納豆」「こな納豆」も安全かつ衛生的に作られています

弊社の『そのもの納豆菌シリーズ』の原料である納豆も、FSM(食品安全マネジメントシステム),HACCP,GMPの三つのパートで構成される、JFS-B規格の認証を取得した工場で、安全かつ衛生的に作られています。

食品や健康食品は、安全性が確保できて初めて有効に利用することができるもの。製品を手に取ってくれるお客様に対してしっかりと安全を担保した製品を提供したいという思いで、JFS-B規格の認証を取得しました。そのもの株式会社は、これからも安全性を保ち商品開発を続けていきます。

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パパッとかけるだけでバランス栄養食に。そのもの株式会社の「こな納豆」
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参考文献・サイト

1)    くらしと微生物.村尾澤夫・藤井ミチ子・荒井基夫 共著、培風館
2)    永井利朗.納豆菌,Microbiol. Cult. Cell24 (1), 21-25 (2008)
3)    Yukari Nishito, et al. Whole genome assembly of a natto production strain Bacillus subtilis natto from very short read data, BMC Genomics, 11, 243 (2010)
4)    納豆菌ゲノムプロジェクト : http://natto-genome.org/index.html
5)    江崎秀男.納豆の科学,生活の科学12, 25-42 (1990)
6)    堀田国元、佐々木博.近代納豆の幕開けと応用菌学,化学と生物49 (1), 57-62 (2011)
この記事の監修
納豆博士|小笠原 和也 そのもの株式会社学術顧問・九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

小笠原 和也

そのもの株式会社学術顧問/九州大学大学院 農学研究院 特任准教授

熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 35年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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