


前回は、栄養学的に納豆と一緒に摂ると良い食べ物を紹介しました。今回は納豆と一緒に摂ることにより、健康効果が期待される食材をご紹介して行きましょう。

小麦、特に外皮(ふすま)に多く含まれるアラビノキシランは、不溶性食物繊維もしくは低発酵性食物繊維に分類される食物繊維です。
スタンフォード大学の研究では、アラビノキシランの摂取で悪玉コレステロール(LDL-コレステロール)が低下することが報告されています。また、アラビノキシランが分解されてできるアラビノオリゴ糖はビフィズス菌の大好物です。ビフィズス菌は、アラビノオリゴ糖を分解する酵素をたくさん持っていることが、鹿児島大学の研究でわかっています。
ビフィズス菌は善玉菌の代表格です。納豆を食べることで腸内のビフィズス菌が増えるとの報告が複数ありますが、小麦(アラビノキシラン)を加えることで、よりビフィズス菌の増加が期待されます。日本人は比較的ビフィズス菌を多く持っているといわれますが、食習慣により必ずしもそうではありません。腸の健康を保つためには、ビフィズス菌を増やす食品を摂ることが必要です。
また、大妻女子大学などの研究では、1日にアラビノキシラン 2.1 g を継続摂取することにより、複数の酪酸生産菌の占有率の増加と酪酸の増産が確認されたとの報告もあります。
ただ、先にも述べたように、アラビノキシランは小麦の外皮部分に多く含まれており、小麦の全粒粉でないと摂取することはできません。全粒粉を使用したパンや焼き菓子、シリアルなどの形で食べるのが一般的なようです。小麦ふすまも入手できますが、全粒粉同様、食べ方が限定的です。
大麦、オーツ麦などに含まれるβ-グルカンは、水溶性食物繊維もしくは高発酵性食物繊維に分類される食物繊維です。
国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所の國澤博士らの研究で、非肥満者における高い大麦摂取と高い納豆摂取は腸内の酪酸生産菌の豊富さと関連することが報告されています。この研究では、大麦などに含まれるβ-グルカンを、納豆菌がオリゴ糖に分解し、それをエサとして酪酸生産菌が増えることが確認されています。
β-グルカンと納豆(納豆菌)の両方を摂ることにより、大腸内で酪酸が生産されること、また、抗肥満につながることが期待されます。
酪酸生産菌がつくる酪酸は、短鎖脂肪酸の一つで、悪玉菌を減らし善玉菌を増やす効果や、腸の機能を高める効果が知られています。ただ、大麦、オーツ麦なども食べ方が限定的で工夫が必要です。

酪酸生産菌を増やすうえで欠かせない成分があります。それが、ビタミン B1 です。腸内にいる酪酸生産菌の多くはビタミン B1 をつくることができません。そのため、大腸にいる酪酸生産菌にビタミン B1 を届ける必要があります。ビタミン B1 が不足すると、食物繊維をとっても酪酸生産菌が減ってしまい、効果が出ません。食材ではありませんが、必要な情報ですので、ここで記します。
ビタミン B1 を多く含む食材は、大豆、豚肉、ナッツ類、玄米などです。大豆を原料とした納豆もビタミン B1 を多く含んでいます。酪酸生産菌にビタミン B1 を届ける食品としては最適です。
また、ビタミン B1 は貯蔵することができませんので、日々、摂取することが大切です。その他のビタミン B1 を多く含む食品も意識して摂ることが大切です。摂り過ぎたビタミン B1 は尿とともに排出されますので、過剰摂取になることはありません。但し、サプリメントによる大量摂取はこの限りではありません。
山梨大学と国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所などの研究チームは、2022年に、もち麦の摂取でブラウティア菌が増える可能性があることを報告しています。
ブラウティア菌は、日本人の代表的な〝やせ菌〟です。正確には、日本人に特有の〝太りにくくする菌〟です。日本人の多くはブラウティア菌を持っていますが、占有率が 6 % 以上でないとその効果が発揮されません。
我々の研究で、ビフィズス菌を平均値以上持つ男性が「そのもの納豆TM」を2ヶ月間摂取したところ、ブラウティア菌が増えたことを報告しました。納豆や乾燥納豆粉末の長期間摂取により、ブラウティア菌が増えることが期待されますが、もち麦を一緒に摂ることにより、さらに効果的にブラウティア菌が増えることが期待されます。
ブラウティア菌を増やすことは、肥満防止以外にも健康効果があると考えられています。現在、もち麦の他にも、ブラウティア菌を増やす食品の探索が国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所などで精力的に行われています。


青魚に含まれる EPA やDHA は、オメガ3脂肪酸であり、健康効果が高いことはたくさん報道されています。最近の研究で、EPA が納豆菌の働きにより、17, 18-エポキシエイコサテトラエン酸(17, 18-EpETE)に代謝されることが判っています。17, 18-EpETEは強い抗炎症活性や、免疫を制御し食物アレルギーの発症抑制効果があることなどが報告されています。
納豆と共に、アジ、サバ、イワシなどの青魚を食べることで、これらの効果が期待されます。
煮魚、焼き魚でも良いですが、オメガ3脂肪酸は熱に弱いので、生食か干物を軽く炙って食べられるのが更に良いと考えます。「めざし」もイワシ(カタクチイワシ、ウルメイワシ)の干物なので、これに含まれます。
わかめ、昆布、メカブ、モズク、オクラ、山芋、長芋、モロヘイヤ、なめこ・・・納豆同様に、ネバネバ食材は夏バテ防止や免疫力の向上に効果があるとまことしやかにささやかれています。
ネバネバの正体は多糖類や糖タンパク質、つまり(水溶性)食物繊維です。健康維持に必要な成分で間違いはありません。納豆に加えて、あるいは納豆とともに食してみてはいかがでしょうか?

味噌、醬油、塩麹、甘酒、酒粕、漬物、かつお節、キムチ、テンペ、チーズ、ヨーグルト、乳酸菌飲料、日本酒、ワイン・・・納豆以外にも数多くの発酵食品があり、それら抜きには我々の生活は成り立ちません。
発酵食品の中には数えきれない種類の有用物質、プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌、麹カビなどの生きた有益菌)、プレバイオティクス(食物繊維、オリゴ糖などの腸内細菌を育てる物質)が含まれています。
腸内細菌も多様性が重要です。乳酸菌やビフィズス菌など、単一の菌(プロバイオティクス)だけ摂っても効果が薄いことがわかっています。納豆とともに多くの発酵食品も積極的に食べ、健康な身体作りを心掛けましょう。
納豆と一緒に摂ると身体に良い食材をいくつかあげました。
ただ、問題は、どうしたらおいしく食べられるか?です。ぜひ、素敵な料理とレシピを考案して報告してください!期待しております!!

参考文献
1) Anna E. Lindell, et al:Human gut bacteria bioaccumulate per- and polyfluoroalkyl substances. Nature microbiology.,
2025 Jul;10(7);1630-1647. doi: 10.1038/s41564-025-02032-5.
2) Qian Chen, Shanshan Sun, et al:Capabilities of bio-binding, antioxidant and intestinal environmental repair jointly determine the ability of lactic acid bacteria to mitigate perfluorooctane sulfonate toxicity. Environment international., 2022 Aug;166;107388. doi: 10.1016/j.envint.2022.107388.
3) Alessandro P, Silvia L, et al:On the Ability of Perfluorohexane Sulfonate (PFHxS) Bioaccumulation by Two Pseudomonas sp. Strains Isolated from PFAS-Contaminated Environmental Matrices. Microorganisms, 2020 Jan 09;8(1); pii: 92.
4) Zeyu L, Guoying W, et al:Prenatal per- and polyfluoroalkyl substance exposures and longitudinal blood pressure measurements in children aged 3 to 18 years. J Am Heart Assoc., 2025 Jun 17;14(12);e039949. pii:e039949

小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。
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