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ヒトは老化に伴い、日常生活動作能力や臓器機能が低下して行くことが報告されています。事実、多くの高齢者は運動量だけでなく、日々の動作・活動量が減少しています。これに伴い、排尿回数を減らしたいがため、水や飲み物の摂取を控える傾向が指摘されています。
また、老化に伴い認知機能が低下して行くことも報告されています。近年、水分摂取量と認知機能の低下に関連性があるとの医学論文が複数報告されています。
水は、ヒトの体の 55 ~ 60 % を占めており、必要不可欠な成分です。また、水の必要摂取量の目安は、生活活動レベルが低い人達で 1日に 2.3 ~ 2.5 リットル程度、生活活動レベルが高い人達で 3.3 ~ 3.5 リットル程度と推定されています。
これらの必要量には食物由来の水分も含まれているため、水分補給として 1日に 1.5 リットルの水を飲む必要があるとされています。
北斗病院(北海道)の保子英之医師らのグループは、高齢者向け介護施設に入所し看護を受けている日本人高齢者 33例について、水分摂取量が認知症リスクに及ぼす影響を調査しています。
その研究によると、1日当たりの水分摂取量が 42 mL/LBM 未満の場合は、MMSE-Jスコア改善との間に相関が認められ、また、水分摂取量と脳の血行動態にも関連性が確認されたと報告しています。
著者らは、「適度な水分摂取は、認知機能改善と線形の関連が認められており、この効果は脳血行動態により媒介される可能性が示唆された。」と述べています。
つまり、適度な水分摂取は脳の血流を正常にし、認知機能低下の改善につながる可能性があると述べています。
LBM とは、除脂肪体重であり、単位はキログラムです。MMSE-J とは、ミニメンタルステート検査日本語版の略であり、認知機能を評価する方法の一つです。

そして、水分と機能性成分の摂取という観点から、緑茶摂取が認知機能に与える影響が注目されています。
金沢大学 脳神経内科学の柴田修太朗医師らのグループは、認知症コホート研究「JPSC-AD研究」の参加者のうち認知症がなく、脳 MRIデータを取得できた 8,766人を対象として、コーヒーおよび緑茶の摂取量と、脳白質病変・海馬・全脳の容積との関連を研究しています。
コーヒーおよび緑茶の摂取量に関しては、200 mL 以下、201 ~ 400 mL、401 ~ 600 mL、600 mL 以上の4群に分類し評価しています。
その結果、緑茶の摂取量が多いほど、脳白質病変容積が小さい傾向が確認されました。緑茶の摂取量と海馬、全脳の容積には関連がみられず、コーヒーの摂取量は脳白質病変、海馬、全脳の容積のいずれとも関連がみられなかったと報告しています。
著者らは「緑茶には(ポリフェノールの一つである)エピガロカテキンガレート(EGCG)が含まれている。EGCG の抗酸化作用や血圧低下作用などにより、脳白質病変が縮小した可能性がある。」と考察しており、また、「脳白質病変は、血管性認知症やアルツハイマー型認知症と密接な関係があることから、緑茶の摂取が認知症予防に寄与する可能性がある。」と述べています。
認知症コホート研究「JPSC-AD研究」とは、健康長寿社会の実現を目指し、65歳以上の一万人超を対象として実施されている研究です。
また、新潟大学医学部の貝瀬陸斗 氏らのグループは、日本人中高年における緑茶摂取と認知症の関連性について、12年間のコホート研究を報告しています。対象は 40 ~ 70歳の日本人 13,660名(男性:6,573名、女性:7,087名)です。
結果として、緑茶摂取量が多いほど認知症のハザード比の低下が確認され、緑茶 1杯(150 mL)摂取による認知症リスクは 4.8 % 低下し、1杯増加するごとに 4.8 % の減少が認められた、と報告しています。
なお、本研究では、緑茶とコーヒー摂取の相互作用についても確認されましたが、両者の摂取量が多いことと認知症のリスク低下との関連性は認められなかった、と報告しています。また、過剰摂取のリスクについても言及しています。〝過ぎたるは及ばざるがごとし〟のようです。
また、澳門(マカオ)科技大学の Shiyao Zhou 氏らは、緑茶の摂取と認知機能低下リスクの関連について、2004年9月 ~ 2024年9月に発表された研究についてのシステマティックレビュー(SR)を行っています。
本 SR では、18研究、58,929名を対象にメタ解析を実施しており、緑茶の摂取と認知機能低下リスクの低減が確認されたと報告しています。男女ともに効果が確認されており、特に、50 ~ 69歳で最も大きな効果が確認されています。
なお、アジア集団では認知機能低下リスクの有意な減少が認められたが、欧州集団では認められなかったとも報告されています。

以下は私の私見ですが、欧州集団での効果が認められなかった原因としては、日常的な摂取が少ないせいではないかと考えられます。食品中の機能性成分による効果は、単回や短期間では得られ難いのが実情です。若年の時から適量を定期的に摂取するのが望ましい効果が得られるのではないかと考えます。
いずれにせよ、緑茶の摂取で認知症リスクを低減させる可能性は示されています。
某日本人メジャーリーガーがCMに起用されたためか、アメリカをはじめとする各国で緑茶(日本茶)が注目を集めています。世界中の研究者にも注目され、効果に関する研究も増えて行くことが期待されます。
参考文献
1) 高齢者の身体的特徴 健康長寿ネット : 公益財団法人長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenkou-undou/shintaiteki-tokucho.html
2) 水は 1日どれくらい飲めばよいか? 健康長寿ネット : 公益財団法人長寿科学振興財団
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/shokuhin-seibun/water.html
3) H. Hoshi, et al. Effect of fluid intake on cognitive function in older individuals: A prospective study, PloS One. 2025;20(10);e0333793. pil: e0333793.
4) S. Shibata, et al. Greentea consumption and cerebral white matter lesions in community-dwelling older adults without dementia, npj Science of Food. (2025)9 :2. https://doi.org/10.1038/s41538-024-00364-w
5) R. Kaise, et al. Green tea consumption and dementia risk in community-dwelling Japanese people aged 40–74 years: A 12-year cohort study, The Journal of Nutrition, Health and Aging. 29 (2025) 100615. http://doi.org/10.1016/j.jnha.2025.100615
6) S. Zhou, et al. The Association between Green Tea Consumption Cognitive Function: A Meta-Analysis of Current Evidence, Neuroepidemiology, DOI: 10.1159/000543784

小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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