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今や国民病とも呼べる花粉症。特定の花粉によって引き起こされるアレルギー反応です。そして、ハウスダスト中のダニによって引き起こされるダニアレルギー。実は、これらのアレルギーは日本のみならず世界中でも増加しています。では、なぜ花粉やダニはこれほどのアレルギー反応を引き起こすのでしょうか?

通常、ヒトの体には細菌やウイルスなどの有害なものが侵入した場合、排除しようとする免疫機能が備わっています。しかし、何らかの原因で無害なものにまで過剰反応してしまうのがアレルギー反応です。つまり、免疫機能が〝暴走〟している状態です。
そして、不思議なことに花粉やダニなどで引き起こされるアレルギーでは、IgE抗体ばかりが大量に作られてしまいます。ウイルスや病原菌などに感染した場合は、IgG抗体やIgA抗体が主に作られます。つまり、異なった反応が起こるのです。
なぜ、花粉症や環境因子で引き起こされるアレルギーではIgE抗体ばかりが作られるのかは、大きな謎に包まれたままです。
花粉やダニによって作られたIgE抗体は、次に花粉やダニを認識すると肥満細胞上で反応し、ヒスタミンなどの化学伝達物質を大量に放出させます。そして、この化学伝達物質がくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、喘息症状などのアレルギー症状を引き起こします。

アレルギー症状を引き起こす物質をアレルゲンと呼び、原因物質(花粉、ダニ、卵、乳、小麦など)に含まれるか、原因物質を構成するタンパク質の一部であることがわかっています。
花粉とダニのアレルゲンも突き止められており、WHO(世界保健機構)とIUIS(国際免疫学会連合)の下部組織である国際アレルゲン標準化委員会により登録されています。
スギ花粉の主要なアレルゲンとして、構成するタンパク質中で最も含有量が多く、IgE抗体との結合頻度(アレルギー反応性)が高い 2種類の糖質分解酵、ペクチン酸リアーゼとポリガラクツロナーゼが特定されています。これらは植物の細胞壁を構成する多糖類を分解する酵素です。
これとは別に、2種類のタンパク質分解酵素がアレルゲンとして特定されており、近年の研究で、タンパク質を分解する力がアレルギー反応を引き起こす重要な因子であることがわかっています。この他にも、桃の主要なアレルゲン、白樺花粉の主要なアレルゲン、口腔アレルギー症候群の原因アレルゲン、ラテックス(天然ゴム)と交差反応性を示す物質などが含まれていることもわかっています。
2大アレルゲンであるタンパク質分解酵素と脂質結合タンパク質が特定されています。その他にも、3種類のタンパク質分解酵素も特定されており、花粉同様に、タンパク質分解活性がアレルギー反応を引き起こす重要な因子であることがわかっています。
また、花粉やダニには、アレルギー炎症を増悪させるアジュバント分子(免疫賦活分子)が含まれることもわかっています。
このように、アレルギー反応を引き起こすアレルゲンが次々と解明され、なぜアレルギー反応が発生するのか特定が進んでいます。また、近年の研究では次世代の抗体医薬の開発も進んでおり、重症のアレルギー治療にも期待が寄せられています。
しかし、薬には副作用がつきものです。現状の抗アレルギー薬では、眠くなる、倦怠感を伴うなどの副作用が出ることが多く、日常生活に支障をきたすことも少なくありません。極力、薬に頼らず花粉症を抑えたいのが正直なところだと思います。
特定の食品の摂取により花粉症の症状が緩和することは、数多くの論文で報告され、医師や厚生労働省のホームページにも掲載されています。

もっともエビデンスが多いのが、乳酸菌や乳酸菌発酵食品(ヨーグルト、キムチ、漬物など)です。これらに含まれる乳酸菌、ビフィズス菌などの善玉菌が作る短鎖脂肪酸などの働きにより免疫力が向上すること、アレルギー症状の改善や予防効果などが報告されています。腸内細菌の理想的なバランスは、「善玉菌2 : 悪玉菌1 : 日和見菌7」と言われていますが、このバランスが崩れ、腸内細菌が悪玉菌優勢に傾くと免疫細胞が暴走しやすくなり、アレルギー反応を引き起こす可能性が高まります。腸内細菌叢や腸内環境を正常に保つことは、花粉症などのアレルギー症状の軽減や予防の観点からも重要なのです。
腸内細菌の多様性を維持することが必要なこともわかってきました。腸内細菌の多数を占める日和見菌の種類と数を増やし、善玉菌の味方につけることも大切です。
そのために大事な働きをしているのが納豆菌です。体内に入った芽胞状の納豆菌は生きたまま胃を通過し、乳酸菌やビフィズス菌のエサとなるオリゴ糖を作ったり、呼吸などの酸化により発生する過酸化水素を分解し、善玉菌が住みやすい環境を作る等のサポートをしています。

そして、納豆菌を摂取することで、乳酸菌、ビフィズス菌、ブラウティア菌などの善玉菌が増えることもわかっています。日頃から乳酸菌やビフィズス菌と共に納豆菌を摂り、腸内細菌の多様性を増やし、アレルギーに負けない身体を維持しましょう。



参考文献
1)厚生労働省 花粉症Q&A(Q 18.) :
https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/kafun/ippan-qa.html
2) Medical Note 花粉症 :
https://medicalnote.jp/diseases/%E8%8A%B1%E7%B2%89%E7%97%87
3) 河本正次,児玉智基 : なぜ花粉やダニはアレルゲンとなるのか?,化学と生物, 62 (4), 175-180 (2024)
4) 国際アレルゲン標準化委員会(WHO/IUIS Allergen Nomenclature Sub-Committee): http://allergen.org/index.php

小笠原 和也
そのもの株式会社学術顧問/元九州大学大学院 農学研究院 特任准教授
熊本大学大学院医学教育部卒。 ナットウキナーゼをはじめとする機能性⾷品原料の研究開発、 39年間にわたる納⾖菌を主とする微⽣物学・醗酵学・酵素学の研究開発の経験をもとに幅広く活躍中。

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